局や事務所による過保護から開放された期待感

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亀梨和也の「妖怪人間ベム」は、「逆視聴率王」と揶揄される中での健闘だった。

だが、ツンデレマスコミはいささか厳しい書き方をした。

それだけでなく、身内にも「敵」はいたようだ。

「妖怪人間ベム」は土曜日21時00分〜21時54分の土曜ドラマ枠で放送された。テレビ業界的にはゴールデンタイムといわれ、実際にその枠では過去に幾多の名作人気ドラマが生まれた。となれば、製作現場だけでなく、局を挙げてこのドラマをプッシュしていくべきところだろう。

ところが、そうは行かない事情がある、と書きたてたのは、またもや『東京スポーツ』（11年11月6日付）だった。

記事によると、原因は大野智主演の「怪物くん」映画版にあるという。もともと土９枠で放送されたドラマだが、日本テレビ制作で映画化された。そこで、「妖怪人間ベム」よりも優先して「怪物くん」のプロモーションに力を入れたというのだ。

ある日テレ関係者によれば、「局の周りは『怪物くん』だらけ。宣伝番組も一番多いかな。それだけジャニーズ事務所のブッシュが強いんだよ」（同紙）とのことだ。

「今、本当に押せ押せで行きたいのは『ベム』なんだよね」（同）という現場の声があがっているものの、ジャニーズ事務所の優先順位はKAT-TUNよりも嵐のほうが高く、「『何はともあれ怪物くん』と言ってくる」のだそうだ。

つまり、局の編成上の判断ではなく、ジャニーズ事務所としてオフィシャルに「嵐＞KAT-TUN」という姿勢を打ち出したということだ。

嵐の中ではリーダーを名乗るが、タレントとしてはもっとも影の薄い大野智が主演するから、絶対にコケさせるわけにはいかないということもあるだろうし、ジャニーズタレントの中でもっとも勢いがある嵐をプッシュした方が数字につながりやすい、とそろばんをはじいたのかもしれない。

いずれにしても、嵐優先のためKAT-TUNの亀梨和也は大野智の後回しということだ。「逆視聴率男」だったこれまでのツケとはいえ、事務所の期待度がわかってしまった気がして、ファンならずともちょっとさびしい。

しかし、それは別の見方をすれば、事務所の庇護なしに自分の力で数字を作れるチャンスということである。

メディアの論評の中には、亀梨和也、杏、鈴木福を指して、「3人を揃えるならリメークの妖怪ものなどではなく、現実社会と向き合うまっとうなドラマに挑戦してもよかったのではないか」（『日刊ゲンダイ』10月25日付で碓井広義）という建設的な批判もある。

発想を変えれば、亀梨和也らは妖怪ものであるドラマの設定で、現実社会と向き合う、せつなさや葛藤などを表現できるかどうか、という高度な視点で識者に注目されていたことになる。

つまり、亀梨和也ならそれができたのではないか、と見られているわけである。

識者はきちんと見ているのである。

はっきりいって、大野智の「怪物くん」には、そのような高尚な期待はなかった。もっと露骨にいえば、嵐人気で得られる興収しか期待されていなかった。

事務所、局、御用マスコミ丸抱えの護送船団にのれなくても、批判を吸収しながら自由に発展していく可能性がある亀梨和也に大いに期待しようではないか。